2023年4月14日、大阪IR(カジノを含む統合型リゾート施設)の大阪府と大阪市による整備計画が政府に認定されたことをきっかけに、株式市場ではカジノ関連銘柄への注目が高まっています。
大阪IRの整備にあたっては、建設業やエンターテインメント業など多くの会社の参入により、1兆9,100億円の経済波及効果と約14満員の雇用創出効果が見込まれています。
また、大阪IRでは、関西企業などの20社が計1,000億円強を出資。大阪IRの初期投資額は約1兆800億円で、その半分弱にあたる約5300億円は関係企業による投資でまかないます。具体的には、MGMリゾーツ?インターナショナルとオリックスが40%ずつを出し合い、残りの20%を関西電力やパナソニック、NTT西日本、近鉄グループホールディングス(GHD)などが出資します。
今回は、大阪IRの整備に向けて、実際にカジノで儲かっている企業や大阪IR関連の注目銘柄を紹介していきます。
大阪IR事業に出資している企業
大阪IR事業では、関西企業などを中心に合計20社が参加し、約1兆2700億円を出資しています。
中核株主は合同会社日本MGMリゾーツとオリックス株式会社の2社で、それぞれ約43%を出資。残りの約15%は計20社の少数株主によって出資されています。
【少数株主】
- 岩谷産業株式会社
- 大阪瓦斯株式会社
- 株式会社大林組
- 関西電力株式会社
- 近鉄グループホールディングス株式会社
- 京阪ホールディングス株式会社
- サントリーホールディングス株式会社
- 株式会社JTB
- ダイキン工業株式会社
- 大成建設株式会社
- 大和ハウス工業株式会社
- 株式会社竹中工務店
- 南海電気鉄道株式会社
- 西日本電信電話株式会社
- 西日本旅客鉄道株式会社
- NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社
- パナソニックホールディングス株式会社
- 丸一鋼管株式会社
- 三菱電機株式会社
- レンゴー株式会社
参照:国土交通省
大阪IRの開業に向けて、運営の中核となる合同会社日本MGMリゾーツとオリックス株式会社を中心に、少数株主やその他グループ企業など、さまざまな企業が大阪IRの恩恵を受けることが期待されます。
さすが日本の技術力!遊技事業で有名な企業
カジノ施設に欠かせないスロットマシンは、1台200万円を超えると言われている高級品です。日本には、高い技術力を活かしてカジノのスロットマシンを製造?販売している会社があります。コナミグループをはじめとした遊戯機器メーカーの多くは、日本カジノIR企業候補として検討されており、投資家の関心を集めることが予想されます。
企業名 | 株価 | 株価上昇率 | 売上高 | 事業内容 |
---|---|---|---|---|
コナミグループ (9766) | 10,080 | 68.8% ?? | 314,321 | ゲームソフトやアミューズメント機器の製造?販売とスポーツクラブの運営 |
セガサミーホールディングス (6460) | 1,877 | 6.1% ?? | 389,635 | 遊技機事業、エンタテインメントコンテンツ事業、ホテルの開発?運営 |
ユニバーサルエンターテインメント (6425) | 1,842 | 66.8% ?? | 178,995 | パチスロ?パチンコ機及び周辺機器等の研究?開発?製造?販売 |
ピクセルカンパニーズ (2743) | 62 | 40.9% ?? | 574 | サーバーシステム開発やエンジニア派遣によるIT業務の技術支援サービス、ブロックチェーン技術等の先端技術を用いたシステムの開発?受託 |
オーイズミ (6428) | 398 | 20.9% ?? | 18,127 | 貨幣処理機やアミューズメント周辺機器、パチスロ機の開発から製造販売 |
グローリー (6457) | 2,919.5 | 33% ?? | 255,857 | 通貨処理機やセルフサービス機器の開発?製造?販売?保守、及び、電子決済サービスや生体認証ソリューション、ロボットSI等の提供 |
※売上は2023年、単位:百万円
出典:https://minkabu.jp
https://shikiho.toyokeizai.net/
コナミグループ
コナミグループ株式会社は、1996年からカジノ市場に参画し、世界の市場シェアを握っています。400以上の地域のカジノライセンスを保有し、カジノ向けのスロットマシンやテーブルゲームなどを提供しています。
2023年における「ゲーミング&システム事業(=カジノ機器部門)」の売上高は375億円で、総合売上の10%以上を占めており、事業利益は50億円とカジノ市場で大きく活躍しています。
セガサミーホールディングス
セガサミーホールディングスは、パチンコ?パチスロ機器やカジノ向けのスロットマシン開発?製造?販売を手がける企業です。最近では、アメリカでオンラインカジノ事業を手がける企業「GAN LLimited」を約162億円で買収するなど、カジノを主体としたゲーミング事業の拡大に取り組んでいます。
アルゼゲーミングテクノロジーズ
アルゼゲーミングテクノロジーズは、カジノ向けの機器開発で知られる大手です。カジノ用各種ゲーム機器の開発を主に手がけていましたが、2023年8月に破産を申請。日本のIRリゾート整備の遅れが破産を加速させる要因の1つとして働いたと考えられます。
ピクセルカンパニーズ
ピクセルカンパニーズは、カジノ向けゲームマシンの開発を手がけています。2018年には、マカオのカジノ施設へゲームマシン設置?販売による収益拡大を期待した投資家により株価の上昇を記録。現在は、日本型IRプロジェクトメンバーとして参画しており、カジノ関連銘柄として注目が集まっています。
オーイズミ
オーイズミグループは、遊技機や遊技場向けの周辺設備機器の製造?販売を手がけている会社です。スロットマシンのほか、メダル計数機最大手であることから、カジノ関連銘柄として注目を集めています。
グローリー
グローリー株式会社は、金融事業をメインに交通や遊技なども手がけている企業です。遊技事業では、パチンコの遊技台以外の周辺機器の販売を行っています。また、海外のカジノ業界を主な取引先として、紙幣入出金機の販売も手がけています。海外で培った技術力を活かし、日本のカジノにも参入する可能性が高いでしょう。
豪華な統合型リゾート(IR)施設を運営している企業
日本でのIR施設導入に先立って、世界で豪華なカジノを運営している企業を2社紹介します。
企業名 | 株価 | 株価上昇率 | 売上高 | 事業内容 |
---|---|---|---|---|
ユニバーサルエンターテインメント (6425) | 1,842 | 66.8% ?? | 178,995 | パチスロ?パチンコ機及び周辺機器等の研究?開発?製造?販売 |
バンダイナムコホールディングス (7832) | 3,154 | 4.3% ?? | 990,089 | エンターテインメントユニット · IPプロデュースユニット · アミューズメントユニット |
※売上は2023年、単位:百万円
出典:https://minkabu.jp
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ユニバーサルエンターテインメント
ユニバーサルエンターテインメントは、パチスロ?パチンコ事業に加えて世界の大型カジノ向けの製品?商品の開発やプロジェクト管理を手がける会社です。フィリピンの首都マニラでは、アジア最大級の統合型リゾート(IR)施設「オカダ?マニラ」の運営を行っています。
バンダイナムコホールディングス
日本を代表するゲーム会社のバンダイナムコホールディングスは、2016年からオーストラリアの会社「Ainsworth Game Technology」と業務提供してカジノ向けゲーム機器の開発を手がけています。
2018年には、香港メルコリゾーツがフィリピンのマニラで運営するIR施設「シティオブドリームスマニラ」とパートナーシップを結び、バンダイナムコの独自技術を採用したエンターテインメント複合施設「ザ?ガレージ」をオープンしました。
建設業や不動産開発で活躍!カジノ工事関連の企業
続いて、カジノ施設の建設や不動産開発などの専門分野での技術やサービスを提供している日本の企業を3社紹介します。
これらの企業は、カジノに直接は関係のない事業を行っていますが、日本のカジノ誘致における建設業や不動産業で間接的に付与する可能性が高いことから、新たな人気株として注目を集めています。
企業名 | 株価 | 株価上昇率 | 売上高 | 事業内容 |
---|---|---|---|---|
インターライフホールディングス (1418) | 215 | 32.7% ?? | 11,460 | 大型商業施設の内装工事と携帯電話販売事業 |
船場コーポレーション (6540) | 1,270 | 46% ?? | 24,886 | 調査?企画?コンサルティング、デザイン?設計、制作 |
大成建設 (1801) | 4,707 | 10.7% ?? | 1,642,712 | 国内外における建築?土木工事の企画、測量、設計、監理、施工、エンジニアリング、マネジメント及びコンサルティング |
※売上は2023年、単位:百万円
出典:https://minkabu.jp
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インターライフホールディングス
インターライフホールディングス、アミューズメント施設の企画設計や内装工事を手がける企業です。セガサミーホールディングスが大株主であることや、海外のIR施設の内装工事や大型リニューアル工事を受注していることから、大阪IR関連の新たな人気株として注目を集めています。
船場
船場は、大型商業施設の企画や設計、施工などを手がける会社です。イオングループの施設や銀行、オフィスなどに加えて、交通インフラ施設やエンターテインメント施設、公共施設など事業領域を拡大していることから、大阪のカジノ施設誘致時の需要拡大が見込まれています。
大成建設
大成建設は、日本の大手総合建設会社で、日本兵菌株かの構成銘柄の1つとして知られています。大阪IRの整備では、事業用地の液状化対策工事を行いました。大成建設は、大阪IRの出資に参加していることもあり、今後大阪IRの恩恵を受けることが期待されます。
カジノ施設向け決済システムを提供している企業
カジノ施設では、掛け金や料金を支払ったり、償金を受け取ったりするための決済システムが必要です。効率的かつ高セキュリティな決済システムが不可欠であることから、決済システムの提供会社は大阪IR関連銘柄として注目すべきだと言えます。
企業名 | 株価 | 株価上昇率 | 売上高 | 事業内容 |
---|---|---|---|---|
テックファームホールディングス (3625) | 488 | 21.6% ?? | 5,770 | 業務支援向けシステムソリューションの開発?運用?保守 · スマホ、タブレットやPC等インターネットを活用したマーケティングソリューションの開発?運用 |
日本金銭機械(JCM) (6418) | 1,361 | 26.8% ?? | 25,258 | 貨幣処理機器、金融関連機器、遊技場向関連機器の開発、製造及び販売 |
※売上は2023年、単位:百万円
出典:https://minkabu.jp
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テックファームホールディングス
テックファームホールディングスは、北米のカジノ施設で決済システムやモバイル電子マネーサービスなどを手がけています。政府による大阪IRの整備計画の認定の最終調整がメディアで報じられた2023年春には、大阪IR関連銘柄として、テックファームホールディングスの株価が上昇しました。
また、テックファームホールディングスは、カジノ事業の知見を活かし、カジノ事業参入を支援するサービスを開始していることも、注目を集める要因の1つだと考えられます。
日本金銭機械(JCM)
日本金銭機械株式会社は、世界中のカジノやアミューズメント施設への製品?運営システム提供により、カジノホールの運営に貢献し高いシェアを誇ります。大阪IRの整備計画の実現可能性が高合った2023年春には、関連銘柄として日本金銭機械の株に買いが広がりました。
カジノの施設で活躍!セキュリティ関連の企業
カジノ施設で必須となるセキュリティ分野でも、大阪IRの恩恵が期待されます。カジノ施設のセキュリティレベルの向上に貢献している企業を3社紹介します。
企業名 | 株価 | 株価上昇率 | 売上高 | 事業内容 |
---|---|---|---|---|
セコム (9735) | 10,920 | 44.7% ?? | 1,101,307 | 防災事業、メディカル事業、保険事業、地理空間情報サービス事業、BPO?ICT事業 |
サクサホールディングス (6675) | 3,320 | 180.8% ?? | 37,320 | 情報通信システムの機器及び部品の開発、製造、販売、並びに付帯するサービスの提供 |
EIZO (6737) | 5,160 | 50.6% ?? | 80,849 | 監視や船舶、鉄道、航空管制、各種工場など特殊な環境で使われる映像ソリューション |
※売上は2023年、単位:百万円
出典:https://minkabu.jp
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セコム
セコムは、セキュリティシステムや監視カメラなどのセキュリティサービスを提供する会社です。セキュリティ分野を手がける会社大手であることから、カジノ警備に参入する可能性が高いです。
サクサホールディングス
サクサホールディングスは、監視カメラや入出システム関連機器などの事業を展開しています。成田国際空港の顔認証付きカメラの開発企業として名が知られており、同じ技術がカジノ施設の入口などで導入されることが期待されています。カジノ関連銘柄として注目したい企業の1つです。
EIZO
EIZOは、監視モニターや監視カメラなどの製造を手がける会社です。遊技事業で、パチンコシリーズ機種で有名な「海物語」などの液晶画面を手がけたことで知られています。大阪IRの整備においては、不正行為の監視に、EIZOの高度な映像技術を用いた監視カメラが採用される可能性があり、カジノ施設の設計?運営において恩恵を受けることが期待されます。
狙い目!その他のカジノ関連の企業
意外と知られていない大阪IRに間接的に付与する可能性の高い、カジノ関連銘柄を紹介します。
企業名 | 株価 | 株価上昇率 | 売上高※ | 事業内容 |
---|---|---|---|---|
凸版印刷 (TOPPANホールディングス) (7911) | 3,563 | 82.3% ?? | 1,638,833 | 印刷テクノロジーをベースとした情報コミュニケーション事業や生活?産業事業、エレクトロニクス事業 |
フジ?メディア?ホールディングス (4676) | 1,793 | 66.8% ?? | 535,641 | フジ?メディア?ホールディングスは、放送事業を中心に、メディア?コンテンツ、都市開発?観光、その他の事業 |
※売上は2023年、単位:百万円
出典:https://minkabu.jp
https://shikiho.toyokeizai.net/
凸版印刷
凸版印刷は、世界最大規模を誇る総合印刷会社です。印刷技術を核に、さまざまな企業や官公庁などに課題解決のソリューションを提供しています。ブロックチェーンやNFT関連のプロジェクトも手がけていることから、カジノ施設での個人認証の必要性に対応できるWeb3技術を取り込んだサービスの展開を検討しています。
フジ?メディア?ホールディングス
フジ?メディア?ホールディングスは、三井住友不動産と鹿島と合同で、東京都のお台場エリアにカジノやホテルを含む統合型リゾートの建設を提案しました。ただし、カジノリゾートが提案されたのは2013年であるため、本当に実現するかどうかはわかっていません。
大阪IR関連?カジノ銘柄には投資する価値があるのか?
大阪IRの実現に向けて政府や企業が動き出している今、カジノ銘柄、とりわけ大阪IR関連銘柄は投資する価値があると言えます。
そもそも大阪IRは、人口島の夢洲に建設が予定されている巨大な統合型リゾートです。カジノ施設の区画は全体のわずか3%以内とされており、ホテルやレストラン、ショッピングモール、エンターテインメントなどを楽しめる魅力的な施設となる予定です。
この大阪IRは、大阪?関西に持続的な経済成長をもたらすことが期待されており、具体的には建設時と開業後において以下の経済波及効果が見込まれています。
- IR施設の建設時:1兆9,100億円、約14万の雇用創出
- IR施設の開業後:毎年1兆1,400億円、約9.3万人の雇用創出
このように、大阪IRでは「建設による経済効果」「運営による経済効果」によってさまざまな産業が活性化することから、株価の上昇が期待できます。大阪IR関連銘柄は、IRの動向を深く追うことで投資する価値が十分にあると言えるでしょう。
まとめ
大阪IRの整備に向けて、実際にカジノで儲かっている企業や大阪IR関連の注目銘柄を紹介しました。
日本の大阪市内に建設される予定の統合型リゾート施設「大阪IR」の整備には多くの企業が関わることから、幅広い経済波及効果が期待されています。このことから、株式投資では、大阪IR関連企業が新たな人気株として企業や個人の投資家から注目を集めています。
カジノの遊戯機器メーカーや決済システムなどを手がける企業は注目株ですが、当然ながらすでに多くの投資家に知られています。そこで、大阪IRでの建設業や不動産業に携わる企業や、大阪IRが人気観光地になることの恩恵を受けやすい交通?運送業や観光業に携わる会社など、大阪IRに間接的に付与する可能性の高い「IR関連銘柄」は狙い目だと言えます。今後、大阪IR整備が具体的になってくる中、IR関連銘柄がどのように盛り上がっていくのか注目です。